半導体の樹脂封止工程は成熟度の高い工程ではあるが、近年のパッケージの小型・薄型化やファインピッチ化にともない、成形性に関する問題が顕在化し新たな課題が浮上している。
現状では多くの場合、解析ソフトを併用し樹脂の流動解析から未充填、反り、ボンディングワイヤ変形などの主要な欠陥パターンを予測し、品質基準をクリアするまで成形条件の変更と解析を繰り返すという対処がなされている。しかしながら、解析によって得られた圧力分布や温度分布のデータは、実際に金型のキャビティ内にセンサを設置し計測した実測値と比較すると、必ずしも一致しているわけではないことが検証されている。このような状況から、特に要求が厳しい自動車向け半導体の品質・信頼性の向上を図るには、従来の対処法では課題が残ることが指摘されている。
キスラーはこれらの課題に対して、従来の流動解析に加えて金型キャビティ内の型内圧と温度を実測することを提案している。以下に、その有効性と例を示す。
① 量産時の均質化
量産時に、型内圧に加え金型やキャビティ部の温度を常時モニタすることで、欠陥との相関分析が可能。
例) 温度上昇:樹脂粘度が上がるため流動性が低くなり、ボンディングワイヤが受けるせん断応力が増大し変形の要因になる。また、ショートショット(欠肉)の要因にも直結する。この場合、型内圧最大値が低下し、硬化速度は速くなる。
例) 温度低下:樹脂粘度が下がるため流動性が高くなり、バリの要因になる。この場合、型内圧最大値が上昇し、硬化速度は遅くなる。
② チップクラック予防(離型力のモニタ)
エジェクタピンの下に力センサを設置することで離型性の評価が可能になり、メンテナンスタイミングの判断基準ができる。
例) 連続成形を繰り返すと離型剤が酸化し劣化することで離型力が増加し、成形品にかかる負荷が大きくなりチップクラックが発生する要因になる。水晶圧電式は50kHz以上の固有振動数をもっているため、瞬時の突出し力にも追従し検出可能。
③ 多数個取りの充填バランスの可視化
金型に複数個のキャビティがある場合の均一性をモニタ。すべてのキャビティにセンサを取り付けることで実現。
④ R&Dの改善
流動解析の結果と実測値を比較検討することで、流動解析の精度の見直しが可能。
このような金型内部の見える化(樹脂充填の立ち上がりタイミング、型内圧の最大値、硬化状態など)が可能になると、上記に加えて成形直後に不良を検出することも可能になるため、生産効率の向上や検査コストの削減も期待できる。